トノの砂金

ある採集家の思考 2015.9〜2017.4 2018.4〜2018.7 2019.1~

大地の砂金

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「大地の砂金」は言わずと知れた掘り師のバイブル「砂金掘り物語」の再販本であるが、何度読み返しても読みごたえのある名作である。実在の人物からの聴き取りをベースにした記録文学、といったところであるが、記録文学で数々の砂名作を残した吉村昭にも負けていない。相当金の現場を知る人が記したフィクションではないかとさえ感じる。

採取道具とその使い方のページの筆頭に、カナテコを持ってきているあたり、ちょっと話を伺ってまとめたというレベルではなく、事業採取の現場を知る人の構成だ。本気の採取で真っ先に必要になるものがカナテコであり、カッチャや揺り板よりも重要である。

主人公が63歳の時に語ったとされているが、まずはカナテコだな、次にはカッチャだべ、と順序良く話したとしても、本当に話だけでここまで整理できるものだろうか。現場もかなりリアルに描かれている。と、このように疑ってしまうものの、記録文学としても本当に素晴らしい奇跡のような本であることに間違いはない。

後編の「平成の砂金掘り」も素晴らしい。現代の趣味の砂金掘りで注意すべきポイントや楽しみ方がうまく記されている。こちらも何度も読み返したが、始めたばかりのころと今読むのとでは違う発見がたくさんある。

ちなみに後編の「平成の砂金掘り」の中での道具紹介ではまずはカッチャから始まる。これは事業採取でなく、現代の趣味の砂金採取であることや、筆者の節度ある採取への配慮なのかもしれない。

砂金の本は何種類か処分したのだが、「大地の砂金」は一生手放せそうにない。この本の著者や出版協力者の皆様には頭が下がる。これから砂金をやってみたい人には、自信をもっておすすめできる入門書である。